D i a r y

一生懸命な嘘




チヒロが耐え切れなくなったのか
おれのことを雨にばらそうとした。

おれは反射的に嘘をついた。

泣いている雨に
本当のことなんて言えなかった。

「検査を受けて入院したけど、大丈夫」

下手な嘘だったけど、
雨は縋るように信じた。

雨は泣きながらよかった、

を繰り返した。

翔太がいなくなることが

怖いと言った。

おれも、怖かった、と言った。

電話を切った。

チヒロが涙を溜め、

憤慨した目で睨んでいた。

殴ろうと身体を起こすも、

そんな力はなかった。


チヒロが病室を出て

泣いているのがわかった。

どうしろというんだ。

確実に、身体が最期に近づいている。



2007.2.8  辛い
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