D i a r y

繋ぐ




眼球、皮膚、臓器、骨、髪

この衰えたからだでもし

使えるパーツがあるのなら
遠慮なく使うよう、提供の意思表示をした。
もしくは献体として役立てるよう。

ドナーが見つからずに
死んだ弟の冷たい小さな身体を
抱いていつまでも泣いた夜を忘れてはいない。

譲二はそれについて否定的だった。

おれの亡骸にメスを
入れられることに親として
耐えられないと泣いた。

でも、おれは
望んで提供する。

医者になりたかった。

命を救いたかった。


それが叶わぬなら

せめて、苦しむ人に

この身体を捧げたい。

そして、生きていたい。

もはや、レシピエントのものに

なったおれのパーツには

おれとしての意思など

残っていないのだろう。

でも、繋ぎたい。

生命として、此処に在りたい。

おれの一部だけでも、

雨のいる世界に

生きられるのなら


それにさえ縋りたい。


間違っているだろうか?

生きていたい。



2007.5.1 皐月
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