たとえばそれが始まりだったとして


両親が離婚したのは、私が小学生の時だった。
理由はおそらく性格の不一致。詳しいことは、覚えていない。というか知るのが怖くて、当時私はふたりを避けていた。仮にもふたりの子供、なんとなく雰囲気でわかってしまうのだ。お互い、もう好きじゃないんだなって。ふたりの間にある空気は、もうすでに家族のそれではなかったから。


離婚後は、お父さんが家を出て行って、残ったお母さんとお姉ちゃんと私の三人での生活だった。母子家庭でも、お父さんが毎月養育費を振り込んでくれるから、お金には困ってない。
寂しい、とは感じなかった。
お父さんのことはそれなりに好きだったけど、あのよそよそしい雰囲気でいるくらいなら、離婚したほうがいいと思ったから。お父さんにとっても、お母さんにとっても、離婚という選択が最善だったのだと思う。
お父さんにはたまに会っているし。


だから、離婚によって不幸になったわけじゃないんだ。
よくあることだし、仕方ない。悲しいとは思うけど。
ただ、ひとつの愛の終わりを目の前で見てしまったから。
どうしたらいいのか、わからないだけで。


お母さんには、今、恋人がいる。
もちろん相手はお父さんじゃない。
近隣の市に出稼ぎに来ている、お母さんよりふたつ年上の人。
私もお姉ちゃんも何度かあったことがある。お姉ちゃんは平気みたいだけど、私は苦手だ。嫌いっていうんじゃなくて、どういう態度で接したらいいのかわからなくなってしまう。敬語遣うべき? とか。

お母さんとは数年前からお付き合いをしている。これは私の予想だけど、多分お父さんと別れる前から。
その人とは週に二、三回会っていて、今日もデートだ。
ほんとに、嬉しそうだった。
反対はしない。
お母さんの人生だし。お母さんだって女だ。お母さんが幸せなら、私は喜んで後押しする。



それから、お姉ちゃん。
お姉ちゃんは、私とは正反対。

高校時代はまさにギャルだったお姉ちゃんも、無事高校を卒業して今年で社会人三年目。
仕事場と彼氏さんの家を往復する生活で、仕事に行く前と仕事から帰った後、わずかな時間しか家にいない。ほとんど同棲しているようなものだ。早く結婚すればいいのにっていつも思う。


< 12 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop