問題アリ(オカルトファンタジー)
いつものとおり、遊びに来たシェリーはそれを見てショックを受けて、数日間寝込んだ。
大好きだった老婆の、変わり果てた姿。
見慣れた優しい皺だらけのその顔は、首から血液をせき止められた所為で鬱血し、つるんとした眼球が二つとも押し出されて瞼が閉じない状態になっていた。
黒目は、まるで白目に溶け出したかのように濁り、灰色に変わっていて、風に晒されていた所為で乾燥していた。
鼻や口の端からも体液が垂れ流れた跡がへばりついている。
そしてギィ、ギィ、と風に、まるでブランコのように揺れていたのである。
目を逸らすことも出来ず、直視などしたくないのにその姿から、その顔から、その目から、何一つ逸らすことも、動かすことも出来なかった。
カタカタと、揺れる奥歯。
呼吸が止まっているような、それでも舌が乾いて不快なことだけは、わかって。
喉に空気が、触れ、瞬間。
悲鳴。
近所の人たちが死体を下ろし、病院へと運んでいくその過程をシェリーはただ呆然と見つめて、気絶した。
寝込んでいたその間に、気味が悪いからとその木を切り倒すと言う話が出ていたのだが、グレタの葬式に体調を崩しながらもやってきたシェリーがあの木は切らないでくれと懇願し、四歳の息子もそれに同意したので切られることはなくなった。
それからすぐにシェリーも病気が悪化して死に、唯一心残りだった木が切られまいかと、心配してこの木にとり憑いているのだそうだ。
そして数十年の年月が経ち、この木を切り落とすという話もなかったので安心して二人は家族たちを見守っていた。
だが最近、年老いたグレタの娘、メイベルが枝切りバサミで切り落とそうとしたのである。
それは、伸びすぎた枝を切り落とす必要な作業だったのだが、切れ味の悪い鋏は錆びており、硬く太いその枝を挟んだ時に壊れ、その刃がメイベルの頭に直撃したのだ。