僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「だから祠稀、今は行って。大丈夫だから。捕まるわけじゃない。簡単な事情聴取だけだよ、きっと」
「俺が話せばもっと簡単だろ!?」
「何を話すの。虐待されてましたって、言うの? その体の傷を見せるの? そんなことして、どうなるかぐらい分かるでしょう? 俺と親父さんの話が違うってことだよ。警察に、親父さんが捕まるよ。それを黙って見てたお母さんも、お兄さんも、ただで済むわけないって、分かるでしょう?」
いやだ、いやだ。
そんなことを、聞きたいわけじゃない。
「祠稀は今まで何を守ってきたの……お母さんとお兄さんでしょう?」
俯き涙を流す俺を、ヒカリはしゃがんで見上げてくる。
手首を掴まれて、まるで、駄々をこねる子供をあやすように話すヒカリ。
「大丈夫だよ、うまくやるから。家に、帰らせたりしないから。祠稀も、祠稀が守りたいものも、俺が全部守るよ」
「俺だって、ヒカリを守りたいんだよ……!」
しゃくり上げて、涙を流して、それでも必死に紡いだ言葉は、ヒカリに届いただろうか。
「……ありがとう、祠稀。嬉しいよ。その気持ちを聞かせてもらえただけで、充分」
立ちあがり、俺の手首を引いたヒカリに顔を上げると、ビルの中に赤いランプが規則的に反射していた。
ドクンッと脈が波打って、裏口に向かわせられる足の動きを鈍らせた。