僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


◆Side:彗


覚束ない足取りで部屋に向かう凪の手には、珍しく水のペットボトルが持たれていた。


ココアは颯輔さんの……サヤの好きなものだ。今はそれすら、飲みたくないんだろうか。


「……っ凪!」


思わず、呼び止めてしまう。


今俺にできることなんてないと分かるほど、振り向いた凪はゾッとするほど無表情だった。


「……ごめん、寝る」


パタン、とドアの向こうへ消えた凪に、俺は前髪を掻き上げる。


―――何を……俺は、何をしてたんだ。


ガチャンと言う硬質な音に顔を上げる。凪が部屋に鍵をかけたんだと気付く。


そのまま有須と祠稀を見ると、ふたりとも形容しがたい表情を浮かべていた。俺でさえ、困惑している。


……なんで、緑夏さんは絶対来ないと思ってたんだ。どうして俺は、緑夏さんが来た時にすぐ、動かなかったんだ。


“サヤ”と呼ばせる前に、この家からどうにかしてでも連れ出すべきだったのに。


後悔、後悔、後悔。

そればかりが浮かんで、頭が痛くなる。


「……彗」


ズキズキと痛む頭の中に、すっと入ってきた有須の声。


「……本当?」


何が?

何が本当?


凪が、颯輔さんを愛してること?


聞かなくたって、分かるでしょ。凪がどれだけサヤという存在を、緑夏さんという存在を――…。


「……おい、彗?」


顔を上げたまま固まった俺に、祠稀が声をかけてくる。でも俺はすぐに凪の部屋を振り返り、勢いよく立ち上がった。
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