僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
――意識を手放す前にしくじったと思ったし、どうかスタッフルームで休ませてくれていますようにと願った。
だけどやっぱり結果は、最悪のパターン。
「――……」
目を開けてすぐに白い天井が目に入って、瞬きをして。次に目に入った、腕に刺さる点滴針を見て大方理解した。
……やっぱり、財布なんか持ち歩くんじゃなかった。せめて保険証を抜き取っていれば……。
「……目、覚めた?」
――ほらね。やっぱり。
最低最悪の、1番嫌な状況。
顔を横に動かすと、あたしを見下ろす2つの眼があった。
アイラインなんか引かなくたって、くりくりとした大きな瞳……大っ嫌いな、作り笑顔。
「よかった……今、お医者さん呼ぶね」
「なんで緑夏ちゃんが、ここにいるの?」
あたしの質問に緑夏ちゃんは曖昧に微笑むだけで、だけど手に持ったナースコールは、しっかりと押していた。
「喉乾いたよね? 飲みもの買ってくるから、その間にお医者さんくると思うけど……寝不足による貧血と、軽い栄養失調だろうって」
そう言って小さめのバッグを持った緑夏ちゃんに、あたしは何の返事もしない。
部屋のドアが閉まるのを見るのと同時に、ここが個室だということに気付く。
窓の外は薄暗い。ベッド横の棚に置かれている時計を見ると、午後5時前。
……カフェにいたのが、確か1時半過ぎ。
あたしは布団を捲ってベッドから足を出し、自分が私服のままであることを確認する。
「……っい! たぁ……」
点滴針を引き抜き、滲んだ血に目もくれずベッドから腰を上げた。自分の鞄を持って、床に置いてあったスリッパを履く。
あの女、飲みもの買いに行くとか言ってたけど、サヤに連絡しに行ったに決まってる。
どうせ病院にいる時点で、サヤにもバレたんだろうけど。会うよりマシだ。
まだ気持ち悪いのを我慢して、ふらつく足を無理やり前に出した。