空をなくしたその先に
「あんな目にあって、それでもまだ飛びたいと言うか?

次は死ぬかもしれないぞ?

それでもまだ飛ぶというつもりなのか?」


ゆっくりとダナの首が上下に動く。


「言ってくれるよな」


再び窓の外に視線を向けて、ビクトールは息をつく。


「退院したら、すぐに訓練再開だ」


ぽん、とダナの頭をに手をおいてビクトールは病室を後にした。


病院の庭で、サラが待っていた。


「どうやら、ダナはまだ飛ぶつもりらしいぞ」


そう言うと、サラは目を丸くしたがすぐに笑顔になった。


「早いうちに訓練を再開できるといいですね」

「そうだな。また、見舞いに来てやってくれ」


サラを後ろにしたがえて、ビクトールは病院を後にする。


「ヘクター。おまえの選んだ女は強いな」


風にむかってつぶやくと、まるで返事だとでもいうかのように木の葉が舞い上げられた。
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