空をなくしたその先に
その手を取って、ディオも立ち上がった。

取った彼女の手は、彼の手より一回り小さくて固かった。

ディオの知っている女性の手とは違う。

この手で戦闘機を駆り、銃の引き金を引く。

戦う手だ。

そっと手を離してディオは、レコード棚に目をやった。

近づいて一枚を手に取り、プレイヤーにセットする。

静かな音楽が流れ始めた。

手を伸ばして、ダナを呼ぶ。


「おいで」

「おいでって言われても、
あたし踊れないってば」

「誰も見ていないから大丈夫」

今度は、ダナがディオの手を取った。

ぎこちない手つきでディオはダナを引き寄せる。

右手はこう、左手はここと教えて、ダナはディオの腕の中に収まった。

二人の頭の位置がほぼ同じなのに気がついて、ディオは苦笑した。


「君がヒールのついた靴をはいていなくてよかった」


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