空をなくしたその先に
やや盛りを過ぎかけてはいるが妖艶な美貌といい、

豊かな曲線を描く肢体といい、
見ただけでただ者ではないとわかる。


「思っていたより時間がかかりましたわね」


女性は綺麗に彩られた唇に弧を描かせると、三人を中に通すために一歩退いた。

運転手が車を発進させる音を背に、ディオは屋敷の中に足を踏み入れた。


「お医者様はもうじきいらっしゃいます。

三人とも診てもらう必要があるのかしら?」

「いや、この子だけで十分だ。
俺は包帯でももらえればそれでいい」

「素人療法はお勧めできませんわね。

悪化のもとですもの」


その時はじめて、フレディの左腕に布が巻かれているのにディオは気がついた。

怪我一つしなかったのは彼だけらしい。

こんなことになる原因を作ったのは彼だというのに。

足が沈み込みそうなほど

ふかふかとした絨毯が敷き詰められた広い廊下を、

先に立って女性は進む。
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