空をなくしたその先に
足音一つしない。

例外は時々、彼女の首から下げられた真珠がかちりかちりとふれあう音だけ。

何度か角を曲がって、
屋敷の一番奥まった場所と思われるあたりにたどりついた。

廊下の両側にずらりと扉が並ぶ。

一番奥の部屋をフレディに割り当て、

真ん中をディオ、

一番手前にダナと決めると女性は手前の扉を開いた。

ブーツを脱がせてソファにダナを寝かしつけ、女性は言った。


「どうぞ、こちらでお待ちください」


軽やかにスカートの裾を翻す。
磨かれ、鮮やかな赤を塗られた爪が視界に残った。


「ここはどこ?」


扉のすぐ脇の壁にもたれてディオはたずねた。

肩が重い。

自分の力だけでまっすぐに立っているのは困難だった。


「マーシャルで一番安全な場所さ」


熱をはかるように、ダナの額に手を当てながらフレディは返す。

その手を払いのけられて、苦笑いの表情になった。


< 264 / 564 >

この作品をシェア

pagetop