空をなくしたその先に
見送ったダナの肩が落ちた。

そのまま扉にもたれかかるようにして、ずるずると床の上に座り込んだ。

背中でがちゃりと扉が閉じられる。


「あたし、間違ったこと言っていないよね……?」


胸に抱きしめたケースに向かって何度も何度も繰り返す。

間違ったことは言っていない。
ディオには生きて戻ってもらわなければならないのだ。

たとえダナを見殺しにしたとしても。


「間違ってないよね……?ヘクター……」


つぶやいた名前は、誰の耳にも届くことなく消えた。


自分に与えられた部屋に入ったディオは、ベッドに身を投げ出した。

先ほどの彼女の言葉が何度も耳をうつ。

『あたしを見捨ててでも』

『自分が助かることを考えなさい』

そんなことを言わせるなんてあまりにもふがいない。

償うことなんてできない。

何度謝っても。

その原因は彼自身なのだから。
眠れない夜が過ぎていく。

彼女の温もりなしに悪夢に襲われるのなら。

眠れないほうがずっとましだった。
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