空をなくしたその先に
19.愛なんて知らない
イレーヌの用意した列車は、
カーマイン商会が自前で持っているものだった。

夜の間にカーマイン商会の敷地から、最寄りの駅まで移動させられていたそれは、

ディオの目から見ても贅沢なものだった。

まず先頭車両の後ろには乗務員たちの宿泊施設の車両と、

道中のサービスに必要な品々を積み込んだ車両が二両ほどつながれている。

続いて食堂車。

その後ろにはビリヤードやカードゲームを楽しむための娯楽車両が連結されている。

その次に一両につき二部屋ずつ、ベッドとシャワー完備の客室がある車両が続く。

最高尾は豪邸の応接室をそのまま移動したような全面ガラス張りのサロンカーだった。

自分にあてがわれた部屋に荷物を置いて、なんとなく全員がサロンカーに集合する。
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