空をなくしたその先に
「……だからつらいのよ。思い出さずにはいられないもの」


胸元にやった手が、何かをぎゅっと握り締めるのをディオは見た。

そこにある大切な物の存在を確かめるかのように。


「それにね」


何とも表せない表情になってダナはつけたした。


「そばにいると身の危険を感じるというか、
落ち着かないというか」

「身の危険、か」


思わず繰り返して、ディオの表情も微妙な物になる。

まめで口が上手くて女性の扱いには慣れている従兄。

今回はそれが裏目に出ているようだ。

ダナの警戒心は限界まで高まっているようで、フレディの望む方向には進みそうもない。

もう少し時間をかけて、ダナが彼に慣れてくればまた変わってくるのかもしれないが。

確かにディオとなら、安心できるだろう。

今までだって何かあったわけではないのだから。

改めて隣のダナを見る。

頭に巻かれた包帯。

頬を覆うガーゼ。

まだ首に残る指の跡。

< 307 / 564 >

この作品をシェア

pagetop