空をなくしたその先に
「費用の面は気にするな。

国庫から補填させるし、業務を超特急で進めるようにこちらからも通達を出しておく。

次期国王の名前でな。

ディオも最終的な署名くらいはできるだろう」

宰相と次期国王という以前に、この二人は叔父と甥の関係でもある。

思わず愛称で呼んで、彼は顔をしかめた。


「ディオス殿下、だな。油断した。このことは黙っておけよ」
「かしこまりました」


にやにやとしながら、ビクトールは返す。


「まったくいやな奴だよ、お前は」


そう言うフェイモスの表情には曇りも陰りもない。

親子ほど年が離れているアーティカの長のことを気に入ってはいる。


「ところで宰相閣下」


ビクトールは笑い顔から真剣なものへと表情を変えた。

「アリビデイルの侵攻理由とは、

ディオス殿下の持ち帰った研究成果ではないような気がするのですが?」

「だろうな」
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