空をなくしたその先に
フェイモスの答えは明快だった。

「国に入る前に奪えることができればともかく、国に侵攻してまで奪うほどのものではないだろう。

センティアの研究所の職員がいなくなった今、王子の持ち帰った資料があったとしても実用化には数年かかるだろう。

その間にいくらでも対応策は練ることができるだろうさ」

「なるほど」


ビクトールは、顎に手をあてた。

そんな彼に頓着することなく、宰相は話を続ける。


「狙いはセンティアに侵攻した時、我が国からの援軍を出せないようにすることだろうな。

本命はセンティアだ。

国境をどこに引くかでもめているらしいからな。

ついでに我が国からは鉱山の採掘権くらいは、持っていくつもりだろうが」


まずは正規軍で対応するが、

動ける体制だけは整えておいてほしいと重ねてつけ加え、宰相はビクトールを退室させた。
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