空をなくしたその先に
大学に行くことができるのは、財政的に恵まれた家の者か、
奨学金を得ることができる優秀な学生だけだ。

たしかに、国王の息子というのは国内最高級のおぼっちゃんだろうが、
身分を明かすわけにもいかない。

あいまいにうかべた苦笑いでごまかす。

甲板に出ると、冷たい風がディオの頬を刺した。

まだ秋には間があるとはいえ、ここは上空。
地上よりはだいぶ気温が低い。

はあ、と息をはいてみた。

白くはならないのを見て、
思っていたほど寒くはないのだと目で実感する。


「何やってるの。行くわよ」


先に島に降り立っていたダナが、ディオをせかした。

甲板から見下ろした島内は、
真っ暗だった。

ほとんどの人間が寝ている時間なのだから、当然か。
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