空をなくしたその先に
ライアンがこの船を正式に旗艦としたのは、戦闘中サラを手元に置くためだった。

戦場全体でアーティカがどのあたりに配備されるのか、偵察である程度は察しがつく。

ビクトールの戦闘を間近で見てきたサラのいる自分の部隊を、そこにぶつけるつもりだった。

上官ともそれで合意が取れている。


「サラ」


名前を呼ばれて、サラは無言で顔をあげた。

自分の船に他の人間が乗り込んでくるのは不愉快なものだ。

その不愉快な気持ちを押し殺して、ライアンが積み込む装備の確認をしているのにつきあっている。

手にした書類は装備の一覧だ。


「この戦争が終わったら、除隊しようと思っているんだ」


無言のまま顔をもどして、サラは書類を一枚めくる。

ビクトールのそばにいた時にも、同じように書類を手にしてひかえていたものだった。

あの時、アーティカを離れていなかったら今頃は彼の隣に立っていただろうか。
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