空をなくしたその先に
「除隊した後は何を?」


たずねるのが礼儀なのだろう。
彼の未来になど、興味はいっさいないけれど。

「孤児院の方に支援者がついたらしくてな。

そっちの手伝いをしてほしいんだと」

「そう……あなたが軍で働かなくてもすむのなら、その方がいいのではないかしら」


めくった書類にペン先で綺麗な丸を描く。

積み忘れたものはなさそうだ。


「サラ」


近づいてきたライアンは顎に手をかけて、強引にサラの顔を上向かせた。


「一緒に来ないか。俺には……」


責任がある。

サラをアーティカから引き離した責任が。

皮肉めいた笑みをひらめかせて、サラはライアンの手を顎から外す。


「自惚れないで。

私とあなたはそんな関係ではないでしょう?」


もうすぐ正面切ってぶつかることになるだろう。

捨ててきた故郷と。

ライアンは、『そんな関係』などではない。

それでいい。

サラは仕事を続けるよう、無言でライアンをうながした。
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