空をなくしたその先に
この会話を聞こうとしている人間は、全艦にいるはずだ。


「どこと通信?」

「リディアスベイル、よ」


ひそひそとダナはディオにささやく。

サラがコードを変えていなければ、まだ通信できるはずだというビクトールの読みはあたった。


「おひさしぶりです、ビクトール様」


通信回線を経由して届いたのは、柔らかな女性の声だった。

聞こえてくる声から判断すれば、そこそこ元気にやっているようだった。

ビクトールは腕を組んだ。

無駄だと知りつつも、話を切り出す。


「戻ってこい。今ならまだ間に合うぞ」

「お断りします。私は自分の意志で……貴方のもとを離れたのですから」


サラの声に迷いはまったくなかった。

逆にビクトールを糾弾するかのように、強い口調で責め立てる。


「最近、アリビデイル軍を攻撃している新しい兵器。

貴方はそれが何を意味しているのかわからないのですか?」

「わからないわけじゃないさ。何だって使いようだろ」

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