空をなくしたその先に
ぎり、と奥歯を噛みしめてダナはビクトールを見つめる。

アーティカを裏切った、でも憎めない人があそこにはいる。

これ以上戦場で会いたくない、だから。

零れ落ちた言葉にこめられた意思は強固なものだった。


「……破壊します」

「乗員の待避時間は与えてやれ」


それだけ言うと、ビクトールは向きを変えた。

ゆっくりとした足取りで、艦橋へと進んでいく。


「……ダナ?」


気遣うディオには強いて作った笑顔を向けて、ダナはディオの肘をつかんだ。

そのまま格納庫へと入る。

前方の扉を大きく開けたそこに待っているのは、彼と彼女の戦闘機。

それにはまだ乗り込まず、ダナはディオの肘をつかんだまま壁際へとよって、

そこに取り付けられている通話装置を手に取った。

ディオのすぐそばまで顔を近づけ、二人の耳の間に受信装置がくるようにする。


「通信回線開け!」


真っ先に入ってきたのはビクトールの声だった。
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