空をなくしたその先に
客人はビクトールの家に滞在するのが決まりらしい。

夜明けにはフォルーシャ号で出発だが、
数時間の仮眠をとるくらいの時間はあった。

柔らかなランプの明かりに照らされた部屋は、
簡素ながら居心地がよさそうだった。

壁には、明らかに子どもの手とわかるへたくそな花の刺繍が飾られている。

窓際におかれた小さなテーブルの上には、
名も知れない小さな花がコップにいけられている。


「明日の朝、誰か迎えに来ると思うけど。

日が出るのと同じくらいに出るからそのつもりでね」


よく勝手をしっているのだろう。

てきぱきとベッドを整えると、ダナはそう言って出ていった。

ネクタイは外したものの、上着は脱ぐ気になれずそのままベッドに潜り込む。

潜り込んだ布団は、太陽のにおいがした。

寮の冷たいベッドとは大違いだ。

船の中で昼寝もしたはずなのに、あっと言う間にディオの瞼は重くなった。
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