空をなくしたその先に
ディオは鏡の中をのぞきこんだ。

夜会服に身を包んではいるが、借り物のように落ち着かない。

何度も鏡の前でタイを直し、髪を撫でつけ、夜会服の裾を引っ張っては直す。

そんなことを繰り返しているうちに招待客が姿を現しはじめ、ディオも会場へと入ることになった。

王妃とならんで一段高いところに座をしめて、

勝利を祝う言葉に耳を傾けていても、目は会場の中を探し回ってしまう。

周囲より一段高いところにある黒と、そのそばにいるはずの赤を。

永遠に続くかのように思われた勝利を祝う言葉がようやく終わりを迎え、ディオは席をおりることを許された。

音楽が流れはじめ、招待客はそれぞれ相手を見つけてはフロアへと出ていく。

せわしなく会場内をうろうろしているディオに、何人かが声をかけた。

それには生返事を返しておいて、ディオはひたすらに捜し求める。

< 477 / 564 >

この作品をシェア

pagetop