空をなくしたその先に
胸を大きな傷が横切っているのに気がついて、
ディオは目をそらせた。

そのシャツのボタンをはめながら、
ビクトールは大声で命令をくだす。


「非戦闘要員の待避準備!
島が落ちるような真似はさせないつもりだが、
万が一ってことがあるからな。

戦闘機部隊、発進準備しとけ、俺も出る。

フォルーシャ号もすぐ出られるな?」


壁にしこまれた通話装置ごしに、

「了解!」

「すぐにとりかかります!」

と返事が返ってくる。

この状況下でも、焦ったりおびえたりはしていないようだ。


「ビクトール様!」


ビクトールの後ろからダナが追いかけてくる。

ダナもこの家で寝ていたらしい。

先ほどと同じ白のシャツにパンツ、ブーツという格好だが、
短い髪の毛があらぬ方向に飛び跳ねている。

櫛を通す暇など当然なかった、ということだろう。
< 48 / 564 >

この作品をシェア

pagetop