空をなくしたその先に
「あたしね、数日中にクーフへ戻る。もうここには来ないと思う」

「それがいい。そうすれば俺にも、チャンスが回ってくるし」
「何のチャンスよ?」


小さく笑ってダナは、フレディに預けていた体重を元に戻そうとしたが、彼の手がそれを引きとめた。

「今後ろに見物人がいる。もう少しそのままでいた方が後々面白いぞ」


フレディの悪巧みにダナものった。

もう一度フレディに寄り添いながら、ため息を吐き出す。


「あたしが物語の主人公だったらよかったのに。

そうすればいつまでも夢を見られていたもの」

夢の世界の住人だったら、もう少しだけ一緒にいることができた。

誰にも何の気兼ねもすることなく。

けれど、現実はそんなに甘くはなくて。

旅の間に結んだ絆は、身分の差という壁によって断ち切られようとしている。

「さめない夢はないよ」


フレディの声はどこまでも優しい。

きっと彼は知っている。ディオとダナが何をしようとしているのかを。


「そうね。そろそろ現実に戻らなきゃ」

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