空をなくしたその先に
肩から滑り落とした上着をフレディに返し、ダナは手を伸ばした。

艶やかな笑みを作って、首をかしげてみせる。


「フレドリク様、現実世界まで連れ帰っていただける?」

「喜んで」


恭しい仕草で、フレディはダナの手を取った。

フレディのもくろみ通りカイトファーデン家の長男の次なる狙いは、

赤い髪のパイロットだと言う噂はあっという間にフロア中に広まった。

その直後。

獲物が養父と同じ自動車で帰宅したことで、

今日のところは失敗だという噂も、とんでもない速度でフロア中をかけめぐる。

とはいえ、フレディは会場で知り合った若い女性と姿を消し、彼女狙いだった男性陣にため息をつかせたのだった。

自分の娘を押しつけようとする貴族たちに囲まれたディオは、苦々しく思う半分、彼を羨ましいとも思った。

彼と立場が逆ならよかったのに。

そう願わずにはいられなかった。

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