空をなくしたその先に
ふらりとフレディが現れたのは、そろそろ執務を終えようかという頃だった。

相変わらず最新流行の衣服に身を包んでいて、それが嫌味なくらいに似合っている。


「まいったよ、すっぽかされた」


ぼやきながら、フレディは勝手に執務室へと入りこんでくる。
ディオは書類に判を押そうとしていた手をとめた。


「すっぽかされた?」

「ダナだよ、ダナ」


むくれた顔でフレディはディオの机の端に腰を落とす。

山積みになった書類を一枚取り上げ、


「国王様も大変だよな」


とつぶやくと、もとの位置にもどした。


「すっぽかされた?」


そんなフレディにはかまうことなく、ディオは眉をよせて机越しに身を乗り出した。


「ああ。今朝急に思いついて、昼食に誘ったんだよ。

昨日もうすぐ帰るって言ってたし、その前にと思って。

何の連絡もなく結局待ちぼうけだ」


つまらなそうな顔のフレディとは対照的に、ディオの顔からは一気に血の気がひいた。
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