空をなくしたその先に
「彼女、今屋敷にもいないみたいなんだ。

僕も使いを出したんだけど、外出したまま戻ってないって」


フレディがあわてて机から滑り降りる。


「事故にでもあったか?ビクトールをすぐに呼べ」


フレディの言葉にしたがって、ビクトールが執務室へと呼び出される。


ダナと連絡を取れないときいた彼は、一瞬眉をひそめたが、すぐに警察やら病院やらへと問い合わせの手はずを整えた。


病院に運ばれた怪我人の中に該当するような人間はいなかった。

警察に届けられた事件の被害者の中にもいない。

赤い髪は目立つはずなのに、彼女の姿は完全に消えていた。


「誘拐……か?」


焦れたようにフレディが爪をかんだ。


「誘拐といっても、理由がなければ……」


ビクトールにも心あたりなどない。

わざわざアーティカを敵に回す必要などないはずだ。


「ディオの花嫁候補たちの中の誰かってのは?」

「お話になりませんな」


ビクトールは肩をすくめる。


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