空をなくしたその先に
フェイモスが、政務の合間を縫ってはフレディの墓に花を供えに行っているのをディオは知っていた。

ディオ自身も毎日のように訪れていたから。

遺体の存在しないそこには、代わりに最後に身に付けていたコートとマフラーが納められている。

なぜ、フレディには伝わらなかったのだろう。

皆、彼のことを思っていたというのに。

誰も、父親のことを口にしなかったのは……

彼が養子になった経緯はともかくとして、成長を大切に大切にそばで見守ってきたのに。

知らない方が幸せなことも世の中にはたくさんある。

彼が真実を知らなかったら、今もディオを見下ろして笑っていただろうか。

結局追いつけなかったな……と、ディオの口元をゆるめた。

いつかは彼の身長を追い越せると思っていたのに。

ディオの方は小柄なままで止まってしまった。

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