空をなくしたその先に
フェイモスが戴冠をすませるのを見届けた今、ディオに思い残すことはない。

ただ一つ、あれから彼女と連絡を取れなかったことをのぞけば。

ビクトールは何度も宮中で会ったし、彼に言えばダナを連れてきてもらうことくらいたやすいことだっただろう。

けれど、どうしても勇気を出せないまま彼はセンティアに戻ろうとしている。

今度は一介の学生として。

彼が決意したのは、王位の継承権を放棄することだけではなかった。

先代国王より相続した個人の財産を、全てセンティア国立研究所で殺害された研究員たちの遺族へ分け与えることも決めた。

このくらいでは、償いになんてならないだろうけれど、それでも何もしないよりははるかにましだ。

国を離れようとしている今、ディオ自身が望んでいたより気持ちは晴れていた。

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