虹色ハート

生後２８日目

　ＩＣＵの中だけで過ごしていると、周りのベッドからいろんな会話が聞こえてきます。
　でも、それはアンナにとってはまだ難しい生きるとか死ぬという重い内容ばかり…。

『神様は乗り越えられない試練は与えない』
　誰かが話していたけれど、胸に響く言葉だなあ。
　だけど、どうして産まれたばかりのアンナが大き過ぎる試練を乗り越えなきゃいけないのだろう？
　神様が乗り越えられない試練は与えないのなら、何故死んでしまう子供たちいるのだろう？
　本当に神様がいるのなら、必死に頑張り続けるアンナに次々と恐ろしい試練を与えるのかと思っちゃうんだよね。
　こんな病気でなければ最高の励ましなのだろうけれど、今のアンナにはただただ残酷な言葉に感じてしまいます。

　たぶんアンナは他の子みたいに幼稚園とか小学校に通えない。
　それどころか１年後には生きていないかも知れない。
　本当は１カ月先や一週間後のことだってわからない。
　明日にも死んでしまっていたとしてもおかしくないんだ。
　１２時間後、３時間後、もしかしたら10分後にもこの世から消えているんだ。
　普通だったら悪夢のような想像がいつもリアルに圧し掛かっています。
　神様、アンナにとっては死ぬこともさえもが乗り越えられる試練だと言うの？
　神様、痛みと苦しみに耐え、それでも笑いながら死んでいけと言うの？
　そんなのアンナには絶対無理だよ。
　もう少し命を下さい。
　お願いします。
　
　ママのオッパイが飲みたい。
　もっとママの歌が聞きたい。
　いつもママと一緒にいたい。
　パパの笑顔が見たい。
　パパに抱きしめて欲しい。
　パパとママに甘えたい。
　ずっとパパとママとおねえちゃんで暮らしたい。
　やっぱり、それさえアンナには贅沢な夢なのでしょうか？