虹色ハート

生後29日目

 夕方の面会の時、パパはいつものようにアンナの手を優しく握ってくれました。
「さっき、空に大きな虹が見えたよ」
「今度はアンナと一緒に見られたらいいね」
 へえ、虹ってどんなだろう?
 アンナには想像が出来ない。
「虹は太陽の光が空気中の水滴に反射して七色に輝く帯に見えるんだ」
「七色の光の帯が空に大きなアーチを描き、まるで絵のように美しいから感動するよ」
「虹は近くに思えるから誰もが追いかけるけれど、どれだけ走っても絶対に手に掴むことが出来ない。近づけば近づくほど見えなくなってしまうんだ。どこかアンナに似ているね」
 ふうん。
 でも、アンナはパパとママの子供だから虹じゃないよ。
 どうかこの手を絶対に離さないでね。
 それからパパは『虹の橋』のお話を聞かせてくれました。
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