モドリミチ
喇叭水仙




庭石と芝生のある家

ブランコと砂場のある家




石段を走り

色どりのチューリップにしゃがみ

桜の実を食べた




夏草をくぐり

ハチの巣を追い

山を駈けた




ひまわりの種をとり

高空を見上げ

しのびよる寒風に浮かれた




南天をさがし

井戸水をくみ

雪うさぎ

冷凍庫でとけてしまった




初めての明けの空

鳥を追い

東雲の滲む空

唇を噛みしめた




私は

いつだって走っていた

強くなれると知っていたから

いつだって走っていた




細い帰り道

見上げた空に沈む星は

群青に消えることなく

ただ そこにあった




なつかしき空

今だって泣いてしまう

とどかない 眩む ぬくもりをおもって

泣いてしまう




ベランダと門のない家

裏庭と私のない家




喇叭水仙は

もう

枯れてしまった



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