モドリミチ
忠霊塔の森で




「君は美しくて汚い

 君は人魚姫みたいだ。」




~《小説 忠霊塔の森で》より抜粋~








透き通る海の底

打ちつけられた手足




わたしは あなたの

人魚姫だった




でも

声を上げるの






うたうの




わたしを******のよ




勇気を出して

うたうの




あなたなんて愛してなかったのよ と




乱れた足が

縺れた髪が

皂色の空を落とした

雲を群青にかえた




乾いた つま先で

砂浜を歩く




あなたを 海に 置き去りにして




わたしは

うたうの




あなたなんて愛してなかった




勇気を出して

うたうの




あなたなんて いなかったのよ と







皂〔くり〕…水底によどんだ黒土の意。
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