ふわふわ
 私が起き上がったことで室内の空気に対流が発生して、綿毛の塊は移動したのだろう。私は再び勝手に、そう決めつけて、ソファから下りて、部屋の隅で天井に張り付いている綿毛の塊に近づいた。すると、その塊は、私の頭の上の天井を通過して、フワフワと移動し、先ほどいた照明の脇の位置に戻った。
「生きているのか」
 これは大変なことになった。新生物の発見である。体中が足で、その足の数は100本以上ある。昆虫の常識を覆す生き物だ。確か、新星を発見したのと同じで、新しく発見された昆虫には発見者の名前が付けられると聞いたことがある。私の名前は、田島健一だから、タジマフワフワムシといった名前が付けられるのだろうか。
「よし、まず、本当に新種かどうか、調べてみよう」
 私は、ノートパソコンのスイッチを入れて、起動した。
 検索欄に「フワフワ 虫 白い タンポポ」と入れて検索をしてみた。検索の結果、一番上に出てきたページを開けてみると「ゴキブリの仲間ではないでしょうか」と書かれている。
「バカ言ってるんじゃないぞ。ゴキブリのわけがない」
 検索結果を下にスクロールしていくと「白いタンポポの綿毛の塊のような生き物、ケセランパセランですね」という内容があった。
「ケセランパセラン?」
 私は、そのページを開けて、内容を見た。
 そこにはこう書かれていた。
「ケセランパセランは虫ではないので殺さないでネ」
 虫じゃない。じゃあ、何なんだ。私は、天井を見上げ、まだアイツがいるかどうかを確かめた。アイツは照明の脇でフワフワと呼吸をしているかのように弾んでいた。
「いったい、アイツは何なんだ」
 
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