ゼロクエスト ~第1部 旅立ち
私は必死になって捜していたが、いくら捜しても先程使っていたカードのようなものは、その断片さえも全く見つからなかった。

「参ったわね」

私はとうとう観念して、地面に突っ伏していた。

「どうやら魔王を倒さねば、ここからは出られぬらしいな」

(まだ言ってるよ、この人は)

魔王のことはこの際どうでもいいが、中位クラス以上の魔物がこの先にいる可能性は確かにある。

しかしそれを倒したからといって、この壁が開くという保障は何処にもない。第一そのような魔物を、私たちだけで倒せるとは到底思えないのだ。

「討伐隊の皆様、ようこそお出で下さいました」

突然頭上から、エドに負けないくらいに良く通った声が聞こえてきた。飛び起きた私は、その主を見上げた。

ぱちんと、何かを鳴らすような音がその方向から聞こえてくる。と、四方の壁に取り付けてあった松明が一斉に灯った。

2階の暗がりからソレは前へ出てくる。

大きめなシルクハットに燕尾服。

ステッキ。

そして顔は、何処からどう見ても豚である。
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