ゼロクエスト ~第1部 旅立ち

宿命

「で、混乱していた時の記憶はないってわけね」

「うむ」

アレックスの身体は首から上以外は、相変わらず俯せのままで動かなかった。

滅茶苦茶に動き回ったり、壁などに全身を打ち付けていたりしたのだ。その上まともに当たっていないとはいえ、魔物からの攻撃も受けている。身体はとうに限界を向かえ、立つのでさえ困難だったはずである。

しかし一通りアレックスの身体を調べてみたところ、多少の打撲傷や切り傷はあったものの致命的なダメージを負っている様子はなかった。

この程度で済んだのは恐らく、全身に剣士用の防具を纏っていたからかもしれない。

もし私のような軽装備しか持たない者がこのような事態に陥ってしまったなら、ただでは済まなかっただろう。
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