意地悪王子とお姫様


「…咲貴君ーっ…」


「ごめんって、泣くなよ」


そう言って、優しく抱きしめてくれた。



「泣き虫」


咲貴君があたしの頭を撫でて言う。


「…だって、咲貴君っ…」


「わかったわかった。お願いだから、泣かないで」


いつも、咲貴君はあたしが泣くと弱気になるんだ。



抱きしめる力が強くなる。



「ずっと、こうやって閉じ込めてていい?」


あたしは黙って頷いた。



「他の男に雨芽を触れさせたくねーよ」


―――俺のものだからいいでしょ?



胸が熱くなった。


咲貴君の一言一言であたしの体温は変わっていく。



「咲貴君も浮気しないでよね…」


あたしが咲貴君の袖をぎゅっと掴んで言った。



「…するはずないし。俺、雨芽に夢中だから」


自然に笑顔になった。



あとから知ったよ。

これがヤキモチだったってこと。


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