好きだと言って。



カタンと音を立てて、机の上に緩く腰を乗せる王子。


悔しいけれど、性格さえ知らなかったなら、そのしぐさだけでも心を奪われそうになるくらい綺麗で優雅だ。


それは、ひとつひとつのしぐさが柔らかいからかもしれない。


そんな王子は、バックからあるものを取り出し、片手にそれをちらつかせた。




「これさ…お前のじゃない?」


「あ…っ」



黒字にカラフルな水玉模様の長財布。

そして、ハートのキーホルダー。



紛れもなく、あたしの財布だ。


恐らく、昨日のエレベーターでとられたんだ。




「…めっちゃ中身かわいそうなんだな。」


「うるさい!返してっ」


急いで奪いかえそうとすると、ヒョイと手を挙げられ届かない。



「返して?ひとりで勝手に暴れてバックから飛び出したのを拾ってやったんだろ?」


「なんでそこで返さないのよ!」



それならジャンプ、と飛んでみたけど、今度は机から腰を離し立ち上がられてしまった。



絶対に勝ち目がないとわかり、大人しくした。



「か…返して、ください。」


「…このキーホルダーに彫られてるのってさ、なんか意味あんの?」


「は…?」



返してとお願いしたあたしに対して、王子はまったく違う話をする。



もう一度手を伸ばしてみたけれど、ヒョイと交わされる。



あたしの要求はスルーですか…。



「このハートん中に彫ってある文字って、意味あるわけ?」


「…関係ないじゃん。」

「やっぱ意味あんだ?」

「ないよ!検索しないで!」


「言わなきゃ返さない。」



そう言われて、仕方なく嫌々口を開いた。


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