好きだと言って。
2

王子との時間





「…」




それきり会話はしなかった。


普通に授業を受けて、普通に家に帰ろうと思っていた。



だけど、帰り道に「SALE」なんてでかでかと書かれた旗を見てしまい、つい足をとめてしまった。













「…この服可愛いかも」


一着のワンピを手に取り、ボソリとつぶやく。


現在、学校帰りに通る百貨店に寄り道中だ。



旗に書かれた文字と、外の暑さにやられて迷わず来てしまった。



今は6月下旬。

天候が不安定で、妙に蒸し暑い。


だけど、結局今月は、もうお財布が軽くなっているから、ただ涼しみにきただけとなるのだけれど。





そうして今、2Fの洋服フロアでワンピ試着中である。


「…何気にイケてない?」

鏡の前でくるりとまわってみる。


これ着てどこへいこうか。

友達とショッピング。

彼氏とデート。


………て、彼氏いないか。


これ買ったって、着る機会ないんだし諦めるか。


ワンピを脱いで、さっさと帰ることにした。




カチ


近くにあったエレベーターのボタンを押した。


わざわざエレベーターを使うのもなんだが、とおくのエスカレーターを使うのも面倒なので、あたしはこの道を選んだ。



面倒くさがりやのあたしの悪いところだ。


だから、最近やけにお腹回りに肉がつく始めてしまったのだろうか。


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