Tea Time Romance
「バケツをひっくり返したみたいだな、外を片付けるのは雨がやんでからでいいぞ」

 マスターがタオルを投げてよこした。

「いえ……傘を持っていかないと」

「傘……?ああ、そうか」

 ずぶ濡れの僕を見、マスターの瞳がにんまりと笑う。


「口紅、ついているぞ」

 その言葉に、僕は慌てて唇を拭った。
 やれやれ、といった表情のマスター。

「馬鹿……シャツにだよ」

 とたん、体中が熱くなり、僕は傘を掴んでキッチンを出た。
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