甘い魔法―先生とあたしの恋―
「えっ……おい、啓太! 女殴るのはまずいってっ……」
孝治、と紹介された友達の制止を振り切るように、啓太が思い切り手を振り下ろす。
真っ直ぐに向かってきた手に、あたしがきつく目を瞑った時……腕を掴まれて後ろに強く引かれた。
目を開けると啓太の手が途中で止まっていて、その目があたしの頭の上を見据えていた。
「……女に手あげるなっつっただろ?」
「……―――っ」
すぐ上から聞こえてきた先生の声に……、
あたしの胸を緊張とは違う感情が締め付ける。
「おまえ……こないだっからなんなんだよっ!
関係ねぇのにいちいち出てくんじゃねぇよ!!」
「先に言っとくと、俺、空手、柔道、ボクシングの経験者だから。
んでもって、教師。
おまえ警察に突き出したらタダじゃ済まねぇんだろうな。
今までの事もあるし……どうする?」
先生の言葉に、啓太は表情一つ変えずに少し黙って……それから面白くなさそうに舌打ちを打ってから帰るよう友達に促した。
「……行くぞ」
「あ、ああ。そうだな」
階段を下りて行く啓太に、先生が口を開く。
「もうこいつの前に顔見せんなよ。
今度来たら警察に突き出すからな」
最終警告にも聞こえる言葉に、啓太は振り向かなかった。
しばらくして、パタン、と寮のドアが閉まる音が静かに響いた。
ドアが閉まった音を聞いた途端、先生が長い息を吐いた。