甘い魔法―先生とあたしの恋―


「実姫、今日三者面談じゃん」


その日の放課後、諒子が鞄に教科書を詰めながら言った。


今日から始まる三者面談のため、授業はお昼過ぎに終わる。

そのため空いた午後に、生徒は浮き足立っていた。

……今日三者面談の生徒を除いて。


「あ、うん。だね」


先生と別れた事は、

まだ諒子にも言っていなかった。


自分でも気持ちの整理が出来ていないのに、言葉になんか出したら、涙が止まらなくなる事が分かってたから。


言葉にした途端に、

また大きな後悔が襲ってくる事が分かってたから。



「じゃああたし帰るかな。おじさん、もう来るんでしょ?」

「うん……」


本当の事を言えない後ろめたさに、胸がちくんと小さく痛む。


いつ、整理がつくか分からない気持ち。


整理なんか、つかないんじゃないかと思う気持ちに、

唇を噛みしめた。



気をつけていないと、すぐに頭を支配する先生に……、目をきつく閉じた。


先生の笑顔を、抱き締めるように。









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