甘い魔法―先生とあたしの恋―


 ※※※


「実姫さんは成績も優秀ですし、このままの位置をキープできれば幅広い大学の選択肢が……」


島田先生とお父さんの話を、半分上の空で聞いていた。


お父さんが学校にくるなんていつぶりだろう。

なんて考えながらも、この校舎のどこかにいる先生に、気持ちが勝手に飛んでいく。


想っては、考えては、頭の中に浮かんでくる先生の姿に泣きそうになる。


それは今も例外なんかじゃなくて、あたしは向かい合う島田先生に異変を感じ取られないよう、俯いた。


「お父さん、他に何か聞きたい事はありますか?」

「いえ……色々と迷惑おかけすると思いますが、よろしくお願いします」


気がつけば、二人の会話は終わったようで。

最後の挨拶に、あたしは席を立つ。

教室を出ると、次の生徒が呼ばれてすれ違いに教室に入っていった。


各々のクラスで行われている三者面談。

ぼそぼそと聞こえてくる声が、いつもの学校とは違う雰囲気を作っていて、そんな中をぼんやりしながら歩く。


そのまま校舎を出た時、隣を歩いていたお父さんが口を開いた。


「今日は矢野先生いなかったんだな」

「……―――え?」


お父さんの口から出た先生の名前に、あたしは驚いてお父さんを見上げる。

そんなあたしにお父さんも少し戸惑った様子を見せながら、話を続けた。



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