私、海が見たい
ベビー・ベッドには、子供が寝ていた。
まだ1歳くらいに見える。
顔を横に向け、うつぶせに寝ている。
その横に二人並んで膝をついて立つと、
「この子が………、亜季なの」
中村には、
この子が障害を持っているようには、
見えなかった。
一見すると、普通の子供である。
しかし中村は、
それを言葉に出す事は出来なかった。
子供を見ながら、
恵子が中村のほうへ身体を寄せる。
中村は、恵子の肩を抱き引き寄せる。
中村の胸に顔をうずめる恵子。
「ありがとう」
「もう大丈夫や。
もう大丈夫や………、
安心しろよ。俺がついてるから」
腕の中から、中村を見上げる恵子。
「ありがとう………」
ベビー・ベッドに寝ている亜季と、
横にいる二人。
「ありがとう」
もう一度、恵子は言った。