勇者は僧侶のなんなのさ
「一気に行ける、一気にいっちゃえ!」


ランスは目を閉じ眉間に皺をよせながら、音を立てて飲み込んだ。


飲み込んだと同時に咳込む。


「よく頑張ったね。偉いよ」


背中を撫でる。


ランスの咳は収まってきたが、全力疾走した後のように呼吸は荒い。


「この世の物とは思えない」


息も絶え絶えなランスが搾り出した一言。


頷いておいた。


「じゃお酒も飲んだ事だし、帰ったらどう?」


「そんなに追い出したいのか?」


下を向いたランス。


そうなのだが、こんなランスを見ると口を閉じるしか無かった。


「なぁ、フェイ」


「どうしたの?」


「なんでこんなまずくて汚い店に通うんだ? もっといろいろ有るじゃないか」


言っている事はごもっともだが、そんな事は周りを見てから言ってほしい。


マスターも他の男性客もあさっての方向を向いていた。


「ここはさ、マスターが僕に何もしてくれないんだ。酒も勧められないし、女の子がいるわけでもない。だからかな」


声のトーンを落とす。


「フェイは変だ。私はそう思わない」


ランスの声もだんだん小さくなった。
< 77 / 78 >

この作品をシェア

pagetop