百涙千笑-ヒャクルイセンショウ-

束縛された猫

縛られたくない
自由でいたい。
それでも僕は
縛られてしまった。

何に………?

きっと己に。
きっと規則に。
きっと恐れに。

逃げ出したい。
僕を縛るものを
全部消し去って。

今すぐに
広い広い外の世界に
飛び出して行きたい。

でも 怖いんだ。
全てに裏切られてしまいそうで
でも 嫌なんだ。
全てに縛られるのは。

自由に外を駆け
自由に夢を見て
自由に明日を追いかけたい。

一人で? 誰かと?
海まで? 山まで?

行きたい…
今すぐに。
でも
行けない…
どうしても。

手を伸ばしても
窓さえ触れずに
硝子越しの月が
ただただ光る。

足に力をいれても
床には爪痕がつき
真赤な血が滴って
痛々しい後が…。


涙は未だに流れてる。
悲しい鳴き声だけが
谺する。


自由に行きたい。
自由に生きたい。
自由に……
自由に……

虚しい願いが口を突く。
悲しい思いが響き渡る。
苦しい吐息が耳を触る。

誰か…誰でもいい。
お願いだから
ここからだして。


†+――――――――+†

鎖が身体に食い込んで
紅い痕が刻まれた。

†+――――――――+†
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