溺愛コンプレックス
ドン!
下を向いてたせいで、人にぶつかってしまった。
「あ…ごめんなさ――」
「普通人間は前を向いて歩くんだがな」
この声は…!
見上げると、剣道着姿のレン先輩が立っていた。
「ぎゃ!」
「妖怪みたいな悲鳴をあげるな。ん?珍しいな、今日は一人か」
カナメが一緒じゃないことを不思議に思ったのか、周りを見渡す。
「いっつも一緒みたいに言わないで下さい。私だって一人で帰ることもあります」
「嘘をつくな。去年だって中学生だった弟が校門まで迎えにきてたじゃないか」
う…よくご存知で。