溺愛コンプレックス
act.5 知られざる過去
「…ツバキ!」

カナメが駆け寄ってきて、顔を近づけた。
でも私、カナメの顔がよく見えない。
おかしいな、目の焦点が合わないよ。

「カナメ…、カナメ…」

私は両手を伸ばす。
カナメが私の身体を支えるように抱き留めた。

急に目の前が真っ暗になった。
そして突然の睡魔。
まるで、闇に落ちていくように、私は意識を手放した。


「ツバキ!」

「うそ…ツバキっ!」

二人の声が、遠くから聞こえる。

そう、あの暗い部屋で聞いていた、子どもたちの遊んでいる声みたいに…。


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