恋雫
「勝手に見るもんじゃねェぜ」
総悟は、コーヒーのカップをテーブルに置くと、
棚に置いてある写真立てを、
パタッと倒した。
「…ねぇ、お父さんは?お母さんは?仕事?」
「………ねェよ…」
「ごめん、よく聞こえなかった、もっかい言って?」
総悟は、ソファーに腰をおろし、
入れてきたばかりのコーヒーを、
ぐっと喉に流し込んだ。
「そんなモン、とっくにいねェよ」
微笑んで、総悟は私にその言葉を放った。
一瞬、時間が止まったかのように、
私の体は静止した。
「………ぁ…、なんか…ごめんね」
なんか…、悪いこと…しちゃったな。
ドラマによくありそうな空気。
だけど、総悟は、そんな空気を気にはしなかった。
「ん…、別になんも思ってないし、気にすんな!」
変わらぬ笑顔で、
私の頭に、優しく手を置いた。